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盾と楯は何が違う?表彰盾と表彰楯の違いまとめ

目次
  1. 「表彰盾」と「表彰楯」の違いとは?
    1. 盾・楯が表すもの
    2. 盾と楯の漢字の違い
    3. 表彰盾と表彰楯の形状の違いと店舗による表記の違い
    4. 常用漢字は「盾」!でも決まりはありません
    5. 名目は「盾」でも「楯」でもOK!
  2. なぜ表彰に盾を贈るの?
    1. 西洋文化がルーツの表彰盾
    2. 盾が象徴するもの
  3. 表彰盾は現代に生きる「盾」

「表彰盾」と「表彰楯」の違いとは?

表彰の記念品として、多く利用されているものに「表彰たて」があります。
「表彰たて」の漢字表記は、「表彰盾」と「表彰楯」、2つ存在しています。

「盾」と「楯」という文字が異なるのですが、何が違うのでしょうか。
一見、ほとんど変わりませんが、よく見ると違う漢字です。

「表彰盾」と「表彰楯」は、
「どちらが正しい?」
「何が違う?」
と、迷ってしまうこともありますよね。

そこで、「表彰盾」と「表彰楯」の違いと、どちらが正しい表記かについて詳しく調べました。

盾・楯が表すもの

表彰盾・表彰楯は、表彰や記念のために贈るものです。
銘文や年月日・贈り主や表彰された人物の名前などが入る、飾りのついた板状のオブジェを指します。
主に社内賞や永年勤続表彰を行う際の、記念品として選ばれます。

素材は木・ガラス・プラスチック・アクリル・陶板などさまざまです。
表面にはメダルや王冠、月桂樹やオリーブの冠を模したもの、リボン、企業や自治体・省庁など贈り主のロゴやマーク、鷲など、様々なモチーフが飾られます。

写真たてや置時計のように飾る方が多いと思いますが、表彰「盾」・表彰「楯」とあるように、もとは武器の防具である「盾」の形を模していました。

盾・楯の漢字が使用されているように、表彰盾・表彰楯は、本来「たて」そのものを表すオブジェだったのです。
日本や中国でも古来戦闘には「たて」が用いられてきましたが、表彰たてのモチーフになったものは、ヨーロッパの「たて」です。

盾と楯の漢字の違い

「たて」には盾と楯、2つの漢字があります。
いずれにも「たて」という意味があり、特に「盾」は「矛盾」という言葉で良く知られていますね。

矛盾は『韓非子』という、非常に古い思想書のなかに出てくるお話からできた言葉です。
ここで出てくる盾は、矛から身を守る防具としての「たて」です。

では、盾と楯という漢字は何が違うのでしょう。
手元にある漢和辞典、『新字源』を引いてみました。

「盾」…たて
「楯」…たて・てすり・欄干など

漢字は中華文化圏の文字のため、辞典にある「たて」は中国のものを表します。
より古くから使用されてきた文字は盾で、木製だけでなく青銅や鉄製のものもありました。
木製のものが、木へんのついた楯と呼ばれたようです。

いずれも、剣や矢・矛などの攻撃から身を守るための防具でした。

どちらの漢字も同じ「たて」を表していますが、素材が様々であったため、木でできたものに「楯」という漢字をあてていたと考えられます。

表彰盾と表彰楯の形状の違いと店舗による表記の違い

クリスタルやガラスの表彰たてを多く取り扱っている弊社でも、表記は「表彰盾」です。
漢字の「盾」と「楯」が、いずれも防具の「たて」を表すことがわかりました。
では、「表彰盾」と「表彰楯」には違いがあるのでしょうか。

比較してみると、表彰盾を扱う店舗では、「盾」という漢字を使っているところが多いようです。

また、形状によって区別している店舗もあります。

表彰盾…それ自体がたてのような形をしており、ワッペンのような見た目のもの
    木製あるいはそれ以外の様々な素材で作られているもの全般

表彰楯…木製の板で作られているもの全般。
    特にメダルなど表彰アイテムを取り付けるスタイルの板状のオブジェ

現在では、木製のものだけでなく、クリスタルやガラス・アクリル・プラスティックなど様々な素材でできている表彰たても増えています。
また、時計がはめ込まれているものや、写真が入るような特殊構造のものもあり、多様化しています。

アトリエ・グレインのクリスタル表彰盾
アトリエ・グレインのソーダガラス表彰盾
アトリエ・グレインの時計表彰盾

常用漢字は「盾」!でも決まりはありません

もうひとつ、「盾」と「楯」という漢字には違いがあります。
「盾」は常用漢字ですが、「楯」は「表外漢字」(常用外漢字)です。

つまり、「盾」は小中学校で習う漢字で広く認識されていますが、「楯」は認識されていない可能性がある漢字ということです。
ただし、法務省の定める「人名漢字表」には掲載されている文字です。

企業のルールで、文書等には常用漢字を使用する場合は「表彰盾」と表記した方が無難です。
しかし、これまで長らく「表彰楯」という漢字を使用してきたという場合は、今後も「表彰楯」と表記しても良いのではないでしょうか。

常用漢字かどうかの違いしかなく、意味も読み方も同じです。

参照:「人名漢字表」法務省

名目は「盾」でも「楯」でもOK!

表彰たては、「表彰盾」でも「表彰楯」でも表記としては意味の違いがない、ということがわかりました。
いずれも同じものを指しますが、「盾」とある場合は常用漢字です。
また、慣例として「楯」と表記しているメーカーや企業もあります。

いずれも同じもので、使い分けなければならないと決まっているわけではありません。

表彰時の授与品目録や、福利厚生費の計上では、「表彰盾」と「表彰楯」いずれも使用できます。
ただし、企業内では表記を統一した方がわかりやすいでしょう。

なぜ表彰に盾を贈るの?

それでは、なぜ表彰に盾を贈るようになったのでしょうか。
前項で盾と楯の漢字の違いについて解説しましたが、実は表彰盾を贈る文化は、古代のヨーロッパが起源となって広まりました。

西洋文化がルーツの表彰盾

表彰盾のルーツは、古代ヨーロッパにあるとされています。
古くは神話にも盾が重要な役割で登場します。

ギリシャ神話では、ゼウスが娘の女神アテナに与えた盾「アイギス」の物語が有名です。
アテナはメドゥーサ退治に赴く英雄ペルセウスに、アイギスを貸し与えます。
見事メドゥーサを討ち取ったペルセウスが手にしていた最強の盾「アイギス」は、英語で「イージス」。
日本をはじめ、各国の海を守る「盾」として操業しているイージス艦に、その名が残っていますね。

古代ギリシャやローマでは、体が隠れるような大型の盾を持ったファランクス(重装槍歩兵)やテストゥド(亀)部隊が、戦術上とても重要な役割を果たしていました。
彼らは集団で大きな盾をかざして、亀の甲羅のような「歩く防御壁」を作り、最前線を進撃したのです。

戦争に勝利すると、大きな盾を重ねて飾り付け、戦勝を祝ったそうです。

時代が進むとともに戦術も変化し、12世紀頃には十字軍に代表される騎士による騎馬隊が戦いの中心となっていきました。
聖地奪還を誓う十字軍の騎士たちは、紋章や旗印を掲げ、盾はそのモチーフとなっていきます。
さらに盾は、勲章などのモチーフとして用いられるようになりました。

また、ヨーロッパの中世封建社会では、荘園領主や貴族たちが贈り物として盾を贈答するようになりました。
友好の証であるとともに、「もしあなたが私の領地を攻めることがあれば、この盾で防御して撃退します」という意味がこめられた、暗喩的な贈り物だったそうです。

時代が下ると貴族政治が市民革命によって終焉を迎えますが、「盾のモチーフを贈答する習慣」は残りました。
表彰盾の贈答は、国境を越え、いまや世界中で行われるものとなっています。

ちなみに、ルーツにあたる古代ローマがあったイタリアでは、サッカーリーグセリエAで優勝することを今でも「スクデット(盾)を取る」といいます。

盾が用いられたのは、ヨーロッパだけではありません。

中国では紀元前5世紀の遺跡から、盾が出土しています。
木製に高度な漆塗りが施された贅沢なもので、前4世紀出土の盾は反りをつけた木に布を貼った、ハイブリッドな作りであることが分かっています。

先ほど登場した『韓非子』は前3世紀の書物ですが、鉄の盾を表す言葉が出てきます。

日本でも、古くから盾は使用されてきました。
「盾持人」という、盾を構えた人の埴輪が出土しているほか、盾そのものをかたどった埴輪も存在しています。

さらに、祭礼で使用されることもありました。
中国では周王朝の官位制度や政治制度、祭事などについて記された書物『周礼』に、追儺(ついな)の儀礼で盾を持った方相氏(ほうそうし)が登場します。

この儀礼は日本に伝わり、宮中行事の追儺(ついな・おにやらい)となって、現代の節分における豆まき行事などに形を変えて残っています。
中国や日本で盾は、魔除けや厄除けのような、呪術的意味合いをもった象徴として捉えられているようです。

つまり、現代の表彰に贈られる盾のルーツは、古代ローマを中心とした古代ヨーロッパにあるのです。

表彰盾のルーツは古代ヨーロッパにあるところから見ても、表彰盾の漢字が「盾」か「楯」かにこだわる必要はないのかもしれません。

盾が象徴するもの

盾を持つ部隊が戦争で非常に重要な役割を果たしていた古代ギリシャやローマでは、盾に象徴的な意味が生まれました。
個人の命を守る「兜」よりも、部隊を守る「盾」の方が重要であると考えられ、それは名誉にもつながりました。

部隊の勝敗を左右する盾を、戦いで奪われることは最大の恥辱にあたり、処刑に匹敵する罪だった時代もあるそうです。

古代ギリシャやローマの戦術から、盾は「勇気・兵士としての矜持」の象徴となっていきました。
さらに、戦闘や戦争に勝利すると、勇気と誇りの象徴である盾を積み重ねて飾り祝ったことから、名誉や戦勝・功労・勲章を意味するようになっていきます。

中世に入るとヨーロッパでは騎馬戦が盛んになり、名誉を重んじる騎士道が重視されるようになりました。
騎士道は「アーサー王物語」など騎士道物語を多く生んで広まり、ヨーロッパ文化の一部を形成していきます。

騎士は馬に乗るため、古代のように巨大な盾はなくなりましたが、盾のモチーフは所属や一族・名誉を表す紋章として使用されるようになりました。

現在の表彰盾の表面を彩る飾りも、中世ヨーロッパから脈々と伝わる様々な紋章を組み合わせた、盾のモチーフを想像させるものです。

さて、お話はヨーロッパにおける盾と紋章の関係に進みます。

ヨーロッパの紋章には、中央に盾が入っていることをご存じですか。
大きな盾をモチーフとした紋章も、中心部分に盾を配置しており、中央の盾は「エスカッシャン」と呼ばれています。
エスカッシャンは、日本の家名や家紋同様、非常に重要な意味を持つ紋でした。
「エスカッシャンの汚点」という言葉は、家名の名折れや一族の恥、という意味に使われるほど、名誉や威厳に大きく関わるものなのです。

日本人になじみ深い盾の紋章のひとつに、ポルシェのエンブレムが挙げられます。
ポルシェのエンブレムをよく見ると、盾の中央にさらに小さな盾があり、「黒い跳ね馬」が描かれていることがわかります。
この黒い跳ね馬の紋章は、ポルシェの本社があるドイツのシュトゥットガルト市の紋章です。
シュトゥットガルトには「馬の園」という意味があるため、市の紋章が跳ね馬なのだそうです。

盾は命を守る武具から、勇気や勝利の象徴となり、名誉や一族の威厳・戦争での功績や功労を表すモチーフへと変化していきました。
表彰盾が象徴するものは、まさに「名誉と功績」。
長年の功労や功績・名誉をたたえるために、ふさわしい贈り物といえますね。

表彰盾は現代に生きる「盾」

盾のモチーフは、名誉や功績をたたえるものとして、表彰盾に今でも息づいています。
イタリアのサッカーリーグセリエAの「スクデット(盾)」やポルシェの紋章をはじめ、様々なシーンで盾は使用されています。

日本では、国民栄誉賞で表彰盾が授与されます。
また、現代の名工や日本赤十字社銀色有功章・日本水難救済会功労章や有功章などにも、表彰盾が授与されています。

名誉と功績をたたえるアイテムとして贈られる「表彰盾(楯)」。
漢字表記は「盾」も「楯」も意味・読み方は変わりません。
常用漢字が良い場合は「盾」を、古くから使用している漢字にならう場合などは「楯」を、団体や企業の規則にのっとって使用すると良いのではないでしょうか。